神話とか、古代史とか。

日本をはじめあちこちの神話や古代史、古代文化について、考えたこと、わかったこと、考えたけどわからないことなど。

はじめに

基本的には、過去に発表した論文などをPDF化して、ひっそり公開する場所ということにしたい。でもこれらはいかんせん論文調で(論文だから仕方ない気もするが)、いま見ると多少読みにくい。 これだとどうも不親切なので、ブログの本文であれこれと、解説も…

2017年以降の論文

「はじめに」に追記するつもりでいたが、1つの記事があまり長くなるのはなんか嫌なので、別立てにしてみた。 2017年の「ワカヒコ - タカヒコネ神話と昔話」「ウケヒと『競争的単性生殖』」に続き、今年は「『物言わぬ子』と異類婿」というのも新たに加わった…

スサノヲとナマハゲ 12 - 病は「木」から

蘇民将来伝説(前回参照)のスサノヲは、茅の輪を着けてない人間を、ひと晩で全滅させている。どうやって殺したかは書いてないが、すぐ後に、「疫病が発生したときは、茅の輪を着けろ」 とのセリフがある。ということはこのときも、疫病でさくさく殺したのだ…

スサノヲとナマハゲ 11 - 蘇民将来の話

「『スサノヲ=植物仮装来訪神』説に有利な神話を挙げていこう」シリーズもこれで5回目だ。最後にとり上げるのは、「蘇民将来」の神話である。これだけは、『古事記』『日本書紀』や『出雲国風土記』じゃなくて、『備後国風土記』の逸文に出てくる。 ちなみ…

学会発表と、論文の件

ここで予告した通り、説話・伝承学会の春季大会で発表してきた。「兄妹始祖の『物めぐり』」という例のアレだ。 始祖神話には、兄妹で結婚する話がちょいちょいある(洪水で人類があらかた滅んでるから、仕方ないのだが)。そういう兄妹は結婚前に、柱とかの…

スサノヲとナマハゲ 10 - 女神を殺す男たち

久々にスサノヲの話である。今回とり上げるのは、スサノヲによる「オホゲツヒメ殺し」の物語だ。『古事記』によれば、事件の概要はこんな(↓)感じ。 天界から追放されたスサノヲは、オホゲツヒメという女神に「喰い物くれ」と言った。オホゲツヒメは、鼻の…

また発表とかする予定

来月、「説話・伝承学会」の春季大会で発表する予定になっている。タイトルは、「兄妹始祖の『物めぐり』」という。天理大学でやるそうだが、行ったことはない。割と久々の関西だ。 あと、また論文を発表した。「『物言わぬ子』と異類婿」というタイトルで、…

スサノヲとナマハゲ 9 - 「底」と「根」の国

「『スサノヲ=植物仮装来訪神』説に有利な神話を挙げていく」シリーズ第3弾は、「スサノヲと根の国との結びつきを物語る神話」だ。ちなみに「根の国」とは、要するに死後の世界である。「その根の国と、植物仮装来訪神になんの関係が?」 という点は、おい…

スサノヲとナマハゲ 8 - 種まく子ら

前回に続き、「スサノヲ=植物仮装来訪神」説に有利だなぁ、と思える神話を挙げていこうという話である。今回はその第2弾、「スサノヲと植物との結びつきが、間接的にうかがえる」神話特集だ。要するに、スサノヲの関係者(特に子供たち)には、植物神・穀物…

スサノヲとナマハゲ 7 - 草と木とスサノヲ

だいぶ遠回りした気がするが、ここからスサノヲの話である。そもそもこの「スサノヲとナマハゲ」は、「スサノヲは、本来暴れん坊の英雄とかじゃなく、植物で仮装するタイプの来訪神だった!」 と、主張するためのコーナーだ(第2回参照)。 この主張を裏づけ…

スサノヲとナマハゲ 6 - 陰謀じゃない方の秘密結社

「植物仮装来訪神の共通点」(くわしくはこちら)シリーズ第3弾、「秘密結社、または男子結社を構成する」の話である。第1弾は第4回、2弾は第5回でやったので、未読の方は参照されたい。 秘密結社という言葉には、男の子の男の子心(←?)を刺激する何かがあ…

スサノヲとナマハゲ 5 - 「泣ぐ子いねがー」な、人々

前々回からしつこく書いてるが、植物仮装来訪神たちの共通点は次の3つである。 1. 「祖霊」、または「死霊」とみなされている。2. 子供に対して教育的(むしろ、脅迫的?)な機能をもつ。3. 秘密結社、または男子結社を構成する。 今回はその2つ目、子供の教…

スサノヲとナマハゲ 4 - 死者たちの帰還

世界の「植物仮装来訪神」には、 1. 「祖霊」、または「死霊」とみなされている。2. 子供に対して教育的(むしろ、脅迫的?)な機能をもつ。3. 秘密結社、または男子結社を構成する。 という共通点があると、前回で書いた。ここからしばらく、これらの特徴を…

スサノヲとナマハゲ 3 - 植物のお化け

前回に続き、スサノヲと「植物仮装来訪神」の話である。ここで一応、植物仮装来訪神なるものを定義しておくと、「植物(主に葉と茎の部分)で、体の大半を覆った来訪神」 ということになる。 図1 ボゼ*1 たとえば日本では、悪石島(鹿児島県)のボゼ(図1)…

スサノヲとナマハゲ 2 - 訪れる神

「スサノヲと植物仮装来訪神」という論文(くどいようだが、「はじめに」からダウンロードできる)のキモは、ざっくりまとめるとこういうこと(↓)になる。 一見よくわからん神であるスサノヲだが、その一番コアになる性格は、「植物仮装来訪神」としての顔…

スサノヲとナマハゲ 1 - 木をつくる巨人

ここからしばらく、「スサノヲと植物仮装来訪神」という論文(「はじめに」からダウンロードできる)の話がメインになる。多分だが、釣手土器のときほど長くはならないと思う。 『古事記』の神話を読んだ人ならたいていスサノヲについて、「なんか知らんが、…

苗字で呼ばれない人々

もはや古代史でもなんでもないが、「ナポレオン」という名前がふと気になったことがある。あたりまえだが、彼のフルネームは「ナポレオン=ボナパルト」。特に世界史では、歴史上の人物は苗字で呼ばれるのが普通である。なぜナポレオンは苗字(ボナパルト)…

アーサーの呪い

その昔、『アーサー王の死』という本を読んだことがある。トマス=マロリーが15世紀に書いた本で、数ある「アーサー王伝説まとめ本」の中でも、集大成と言われてるらしい。 でもこの『アーサー王の死』というタイトルは、もうちょっとどうにかならなかったも…

謎の「養布神社」

谷川健一『白鳥伝説』(集英社)234ページによれば、兵庫県養父郡養父村の「大上川養布神社」に、「降り鐘」というのが祀られてる。物部川から石をとり出して、このお宝を乗せとくと、必ず雨が降るのだという。降り鐘と言ってもお寺の鐘ではなく、弥生時代(…

釣手土器の話 35 (終) - 文様は読める

釣手土器について、語りたいことは語り終えたので、今回でひとまず終わりである。最初から(途中からでも)最後まで目を通してくれた人がいるのかどうかわからないが、もしいたとしたら感謝に堪えない。 ちょいちょい脱線もしたが、このシリーズ(?)の眼目…

「比較民俗学会」の大会に出てきた

論文を載せてくれる(数少ない)学会――比較民俗学会の大会(11月4~5日)に参加し、発表もしてきた。 http://norinagakinenkan.com/whats/hikaku2017.html 特にとちりもせずしゃべれたのはいいが、発表の後会場が、「きょと~ん」な空気になったのはなぜだ。…

釣手土器の話 34 - 2つの「ホト」の釣手土器

第32回で、「3面(裏が双面)の釣手土器」(図1)と富士の噴火には、関係があるんじゃないか、的なことを書いた。火口も女性器も、古い言葉では「ホト」という。火口=性器なら、複数の火口から火を噴く富士は、女神が増殖したように見えたかもしれないとい…

釣手土器の話 33 - ヘビと火山

図1 井荻三丁目出土*1 前回、井荻三丁目遺跡の釣手土器(図1)について、「噴火する火山そのものに」見えるとした。ところでこの井荻釣手土器には、ヘビの頭が4つついている。これは多分、死の象徴としてのヘビだろうが(第20回)、火山活動(溶岩流など)を…

釣手土器の話 32 - 火山噴火と釣手土器

多分釣手土器は、「火を出産して死に、死後の世界の支配者になる」 というタイプの女神を表している。第3回以来、これはもう何度も書いてきた。のちのイザナミに連なる神なので、仮に「プロト=イザナミ」と呼んでおこう。 ところで釣手土器は、縄文時代中期…

釣手土器の話 31 - ここで双面の件

第14回で、「裏が双面の釣手土器」(図1)にちょっとだけ触れた。今回は、もう少し突っ込んで考えてみたい。と言っても、のっけから残念なお知らせでアレだが、特に目覚ましい仮説はいまのところない。第25回や27回と同じく、「こうかもしれないし、違うかも…

釣手土器の話 30 - 型式編年、その補足

前回、「型式編年」の話をした。ところで伊集院卿ほか『日本ピラミッド超文明』(学習研究社 1986年)では、この型式編年が、けちょんけちょんにけなされている。 日本の考古学は、土器の編年に終始しているといってもよい。土器の編年というとたいへん聞こ…

釣手土器の話 29 - 「型式編年」の話もしておこう

いまさらだが、「釣手土器の話」のそもそもの趣旨は、昔書いた論文「吊手土器の象徴性(上)(下)」(「はじめに」からダウンロードできる)を解説してみよう、というところにある。なるべくわかりやすくと言うか、ゆる目の内容にしたいので、説明がややこ…

釣手土器の話 28 - ふくらんで、はじける

第15回で、「釣手土器の主なデザインは、顔面把手付土器の『ふくらんだところ』を窓にすることで生まれたものらしい」 的なことを書いた。「ふくらんだところ」とは、顔面把手の顔(表)の部分や、「目ばかりの顔」(裏)の目の部分だ(図1~3)。図1 顔面把…

釣手土器の話 27 - むしろノヅチの話(下)

前回に続き、ツチノコ(ノヅチ)の正体について、思いつく限り仮説を立てようという話である。まずとり上げるのは、「②ヤマカガシの突然変異」説だ。この説を語るには、17年前の事件から始める必要がある。 2000年5月21日、岡山県吉井町(現・赤磐市)で、太…

釣手土器の話 26 - むしろノヅチの話(上)

図1 札沢出土*1 図2 ノヅチ - 上:『信濃奇勝録』/下:『野山草木通志』*2 釣手土器――特に札沢遺跡のそれに乗ってる太短いヘビたち(図1)は、「ノヅチ」(ツチノコ)のプロトタイプじゃないのかなぁと、第21回で書いた。ちなみにノヅチとは、図2のようなヘ…