神話とか、古代史とか。

日本をはじめあちこちの神話や古代史、古代文化について、考えたこと、わかったこと、考えたけどわからないことなど。

はじめに

基本的には、過去に発表した論文などをPDF化して、ひっそり公開する場所ということにしたい。でもこれらはいかんせん論文調で(論文だから仕方ない気もするが)、いま見ると多少読みにくい。 これだとどうも不親切なので、ブログの本文であれこれと、解説も…

2017年以降の論文

「はじめに」に追記するつもりでいたが、1つの記事があまり長くなるのはなんか嫌なので、別立てにしてみた。 2017年と2018年にそれぞれ2本ずつ発表し、今年はいまのとこ、「綏靖型暴君伝説の展開」だけ。あと1コくらい、年内に発表したいものだ。 以下例によ…

徳川家康、出生の奇説 5 (終) - 「替え玉説」の難しさ

前回の改良版「替え玉説」は、自分で言うのもアレだが、村岡素一郎氏のそれ(第3回参照)よりかなりましではある。じゃこの仮説、結構いい線いってるのかと言えば、正直なとこそうでもない。改良版の「替え玉説」(「人質時代すり替え説」)には、だいたい以…

徳川家康、出生の奇説 4 - ちょっとはましな「替え玉説」

今回は、「家康替え玉説」の弱点を指摘するとともに、ちょっと「修正」を加えてみる。長くなったから、目次つきだ。 1. 事実を知る人が多すぎる 2. すり替えの時期を早めてみる 3. 家康に高値がついた理由 4. 築山殿始末 5. 家康の馬術問題 6. 松平親氏とは…

徳川家康、出生の奇説 3 - ニセ元康の狂詩曲

村岡素一郎『史疑 徳川家康事蹟』*1(1902年)によれば、徳川家康は若いころ、三河の大名・松平元康と入れ替わることで、戦国武将としてデビューした。村岡説だと、その人生はなかなか入り組んだものだけど、ざっくりと要約しておこう。 ① 家康誕生 戦国時代…

徳川家康、出生の奇説 2 - 謎の「源応尼」

徳川家康について、「被差別民(ササラ者、または願人坊主)の出身だ」という説があることは前回で書いた。これを唱えたのは、村岡素一郎(1850~1932年)という静岡県庁の役人さんである。村岡氏は1902年、『史疑 徳川家康事蹟』という本*1で、この仮説をど…

徳川家康、出生の奇説 1 - 「ササラ者」とは何か?

図1 カムイ伝*1 昔、白土三平の漫画『カムイ伝』に、「家康は簓者(ささらもの)の出身だ」という話が出てきた。ササラ者とは、ササラという楽器で伴奏しつつ、教訓めいた物語(説経節*2)を聞かせる芸能民のことだ。「説経節」というくらいだから、もともと…

新版・世界の七不思議 23 - モアイの「たまたま」そっくりさん

以前、たしかツイッターか何かで、「モアイの『たまたまそっくりさん』とか、結構あちこちにある」 的なことを書いた。言いっぱなしというのもちょっとアレなので、知ってる限りのモアイのそっくりさんを、ランキング形式で発表してみたい。ランキングと言っ…

新版・世界の七不思議 22 - 長耳風習②アメリカ・オセアニア編

前回に続き、「長耳風習」の話である。今回も各地の長耳風習について、「プラグ式か、ウェイト式か」「結果型か、目的型か」「男女どちらがやってるか」に注目してみていくことにしたい。ちなみに、それぞれの用語の意味は、以下の通り。 図1 左:プラグ式/…

大会発表の件

12月8日(日)、比較民俗学会の大会で発表することになっている。タイトルは、「ケンムン・山幸・ガンダルヴァ」。去年と同じく、愛知大学の名古屋キャンパスでやるそうだ。 街中へ出るのも久々で、特に意味もなく緊張する。

新版・世界の七不思議 21 - 長耳風習①アフリカ・アジア編

前回、「イースター島(ラパヌイ)の長耳風習は、南米から伝わったわけじゃなさそうだ」 という話をした。もちろんそういう趣旨だから、イースター島と南米文化が中心で、その他は簡単に触れただけだ。今回は長耳風習そのものについて、もう少し深く考えてみ…

新版・世界の七不思議 20 - 「長耳風習」は南米から?

図1 モアイの耳*1 モアイと言えば、耳が長いことで知られている(図1)。顔が長いから、その分耳も長くなったのかと思えば、そうでもないらしい。イースター島(ラパヌイ)には実際に、耳たぶを長く伸ばした人々がいた(図2)。 図2 耳の長い男女*2 図3 ホッ…

新版・世界の七不思議 19 - ティキとウィラコチャは「他人の空似」

前回、「ポリネシア(南太平洋)のモアイやティキ像のルーツは、ティワナクに代表される南米古代文化にあるのだろう」 というヘイエルダールの仮説を紹介した。たしかに、ティキと南米のウィラコチャ像などはそこそこ似ているし(図1~3)、ウィラコチャの別…

新版・世界の七不思議 18 - 南アメリカと「ティキ」の像

イースター島(ラパヌイ)のモアイ像は、南太平洋(ポリネシア)に広く分布する「ティキ」という祖先像(図1)の一種だろう、という話は第14回で書いた。このティキ、またはモアイについて、「南アメリカの古代文化にルーツがあるのでは?」という説が結構、…

新版・世界の七不思議 17 - イースター島「大戦争」

「モアイを掘り下げてみる」シリーズの3回目は、「③ 戦争はあったの、なかったの?」だ。第14回で書いた通り、伝説によればイースター島(ラパヌイ)では、かつて大きな戦争があった。1722年まではアフ(台座)に立ってたモアイ像もこの戦争で、すべて倒され…

新版・世界の七不思議 16 - モアイが巨大化した理由

「① モアイは最初からでかかったのか?」「② そもそもモアイは、なぜ巨大化した?」「③ 戦争はあったの、なかったの?」のうち、①の話は前回で終わった。今回は②、モアイが巨大化した理由について考えてみよう。 前回の内容を踏まえて、まず1つ考えられるの…

新版・世界の七不思議 15 - ちょっと小さいモアイたち

前回は「モアイ・基礎知識編」的なもので、実はここからが本番だ。前の記事も結構長かったが、何しろモアイは謎が深いので、語りたいことはまだまだある。主なテーマは、「① モアイは最初からでかかったのか?」「② そもそもモアイは、なぜ巨大化した?」「③…

「綏靖型暴君伝説の展開」、公開中

「2017年以降の論文」に、「綏靖型暴君伝説の展開」というのを新たに追加しておいた。ちなみに「綏靖」は、「すいぜい」と読む。「人喰い天皇を岩屋に閉じ込めて、片づけちゃいました」 という話がいくつかあって、そのルーツについて考えたものだ。いつも同…

また発表とかする予定

4月28日(日)、「説話・伝承学会」の春季大会で発表する予定になってる。場所は中京大学名古屋キャンパスで、お題は「樹上の人物が水に映る」。 熱田神宮の近くに泊まる予定だが、見物する暇はなさそうだ。

新版・世界の七不思議 14 - みんな大好き、モアイ像

イースター島(ラパヌイ国立公園)については第2回でもとり上げたが、ごく簡単に紹介しただけだ。今回は特にモアイ(図1)について、もうちょっと掘り下げてみたいという気がする。 図1 モアイ*1 ただ何しろモアイと言えば、「石でできた謎」と言ってもいい…

新版・世界の七不思議 13 - 巨石「文化」か、「文明」か

「世界の七不思議」の選定は前回で終わってるから、ここからは補足の話である。今回は、ヨーロッパ(など)の巨石文化が、ときどき「巨石文明」とも呼ばれる件について。 図1 ストーンヘンジ*1 このブログでは、ストーンヘンジ(図1。第2回参照)などのヨー…

「浪漫紀行・地球の贈り物」

ツイッターなどにも書いたが(ここ参照)、メスカルティタン*1(図1)の存在は、TBS「浪漫紀行・地球の贈り物」という番組(1994年8月31日放送分)で知った。これを調べていてわかったが、1990年代のTV番組は、ネット検索じゃあまり見つからない。現在継続中…

新版・世界の七不思議 12 - ここで7つに絞ってみる

クラスAからCまでの「七不思議」候補をおさらいしておくと、こんな感じである(↓)。 A. 第2~3回① ナスカの地上絵(ペルー)② イースター島(チリ)③ マチュピチュ(ペルー)④ ストーンヘンジ(イギリス)⑤ ギザのピラミッド(エジプト)⑥ ボロブドゥール(…

新版・世界の七不思議 11 - メスカルティタンとグラストンベリ=トール

「世界の七不思議」候補のうち、クラスC*1の紹介もこれで終わりである。最後は「⑨メスカルティタン(メキシコ)」と「⑩グラストンベリ=トール(イギリス)」の話。 ⑨ メスカルティタン(メキシコ) 画像URL謎度: ☆☆☆☆☆びっくり度: ☆☆☆☆☆古さ: ?知名度:…

新版・世界の七不思議 10 - オルメカ巨石人頭像と飛鳥の石造物

「世界の七不思議」候補のうち、クラスC*1の紹介もこれで4回目だ。今回は「⑦オルメカの巨石人頭像(メキシコ)」と、「⑧飛鳥の石造物(日本)」を紹介する。 ⑦ オルメカの巨石人頭像(メキシコ) 画像URL謎度: ☆☆☆☆☆びっくり度: ☆☆☆☆☆古さ: ☆☆☆☆知名度: …

新版・世界の七不思議 9 - 万里の長城と三星堆

前回の兵馬俑に続き、中国の遺跡を2つ紹介する。 ⑤ 万里の長城(中国) 画像URL謎度: ☆びっくり度: ☆☆☆☆☆古さ: ☆☆☆知名度: ☆☆☆☆☆ 中国(中華文明圏)は長いこと、北から侵入してくる遊牧騎馬民族に悩まされてきた。で、これを防ぐためのバリケードが万里…

学会で発表する予定

12月9日、「比較民俗学会」の大会で発表することになってる。去年は松阪市(三重県)だったが、今回は名古屋。 お題は「ヤマトタケルと犬」。たまたまだが、名古屋と言えば熱田神宮もあるし、タケルとは何かと縁が深い。

新版・世界の七不思議 8 - サン=アグスティンと兵馬俑

クラスCの第2回目は、「③サン=アグスティン(コロンビア)」と「④兵馬俑(中国)」の2つ*1。 ③ サン=アグスティン(コロンビア) 画像URL謎度: ☆☆☆☆☆びっくり度: ☆☆☆☆古さ: ☆☆知名度: ☆ 1970年代にNHKで放送された「未来への遺産」ではとり上げられて…

新版・世界の七不思議 7 - クノッソスとペトラ

「世界の七不思議」の候補を挙げてくのも、クラスBまで終わったので、ここからはクラスCである。クラスA・Bの間には、実質的な差はなかった。でもクラスCについては、それぞれ「七不思議」候補として、ちょっと推しにくい理由がある。でも捨てがたい魅力もあ…

新版・世界の七不思議 6 - エル=ミラドールからネムルト=ダウ

今回とり上げる「世界の七不思議」候補は、「⑥エル=ミラドール」(グアテマラ)と「⑦カルナック列石」(フランス)、「⑧ネムルト=ダウ」(トルコ)の3つ。クラスAの10候補に続き、クラスBの8つもこれで終了だ*1。 ⑥ エル=ミラドール(グアテマラ) 画像UR…