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釣手土器の話 2 - 棚畑土偶、但し書き

 前回、棚畑土偶(いわゆる「縄文のビーナス」)をとり上げた。この土偶については、少し補足することがある。実はこれ、完全に欠けたところのない状態で見つかったというわけではない。

 図1は、棚畑土偶が出土したときの写真である。たしかにほぼ完形ではあるが、右脚はかなり欠けている。例の文様(股間の5角形)の半分近くは、現代人が粘土で復元したものなのだ。

f:id:calbalacrab:20170205204029j:plain図1*1

 ともあれ、写真を見る限り、この文様がもともと左右対称の形をしていたことはまず間違いない。つまりこの復元は、充分な根拠にもとづいており、わからないところを想像で補ったものではないということだ。月見松土器の文様と比較する上で、支障はないと考えていい。

 特に博物館の目玉になるような出土品は、一見どこが欠けていたのかわからないような形で復元されていることが多い。遺跡の報告書などを見ないと復元箇所がわからないこともあるから、注意が必要だ。

 ちなみに棚畑遺跡の報告書は、こちら(↓)からダウンロードできる。
http://sitereports.nabunken.go.jp/ja/788

*1:茅野市教育委員会『棚畑』1990年 より。