釣手土器の話 6 - この裏面は顔なのか?
釣手土器正面の話はこれくらいにして、ここから裏側(図1。窓が2つある方)の話である。これは本当に、「死んだ女神の頭部」なのか? まぁ死んでるかどうかはおいとくとしても、さしあたり顔なのかどうかが問題だ。
図1 左:曽利出土/右:御殿場出土*1
ちなみに顔面把手のないタイプ(前回参照)でも、釣手土器の背面と言えば、だいたい似たようなつくりになっていることが多い。特に大深山遺跡の釣手土器などは、ぱっと見でいかにも顔っぽい(図2)。
図2 大深山出土*2
実際、浅間縄文ミュージアムに展示されたときは、この土器に「人面香炉形土器」というキャプションがついていたらしい*3(ふだんは川上村文化センター所蔵)。じゃあもう顔でいいんじゃね? と思わなくもないが、ここはひとつ、疑り深い方向で考えてみよう。
この手の釣手土器で顔らしい部品と言えば、厳密には2つの窓(目?)だけだ。窓が2つ並んでるだけで、目を表してると決めてかかるのは、やっぱりちょっと心もとない。できることならもう少し、白黒つけたいのが人情だ。
一応お断りしておくと、「証拠もないのに顔だとか言うのは、学者としていかがなものか」とか、そういうことを言いたいのではない。その時点で決め手がなかったとしても、「こうなんじゃない?」と仮説を立ててみるのはとても大切なことだ。あとで間違いだったとわかったとしても、それで議論が深まったのなら、なんの問題もない。間違いを恐れ、絶対確実なこと(「高さが何センチ、幅が何センチ」とか)しか言わないのは、それこそ研究者として一番ダメな態度である。
ということで、この窓が実際目なのかどうかを考えたいのだが、こっちはどうも正面側ほど簡単にはいかない。なるべくわかりやすいところから、一つずつ片づけていこう。