釣手土器の話 28 - ふくらんで、はじける
第15回で、
「釣手土器の主なデザインは、顔面把手付土器の『ふくらんだところ』を窓にすることで生まれたものらしい」
的なことを書いた。「ふくらんだところ」とは、顔面把手の顔(表)の部分や、「目ばかりの顔」(裏)の目の部分だ(図1~3)。
図1 顔面把手付釣手土器の場合
図2 普通の釣手土器の場合
図3 釣手土器背面の場合
でもこれ、顔面把手(付土器)と釣手土器の間でだけ成り立つ法則でもないらしい。釣手土器の裏側に見られるヘビのデザインにも、同じ法則があるようにみえる。
釣手土器にはその裏に、ツチノコっぽいヘビたちがくっついていることが多い。このヘビたち、だんだん胴体の丸さが強調され、頭が省略されていったらしい(図4。第19回)。
図4 ヘビたちの変化 - 1
それはいいとして、中道例と曽利例・御殿場例を比較すると、ほかにも変化があることがわかる(図5)。中道例のヘビたちの、丸くふくらみきった胴体が消え、真ん中の帯だけになっているのである。
図5 左:中道出土/中:曽利出土/右:御殿場出土*1
これは、図1~3で見た変化と同じではないか? 中道例の、ふくらんだ胴体を壊して吹き抜けにすれば、曽利例・御殿場例によく似たデザインになりそうだ(図6)。
図6 ヘビたちの変化 - 2
どうもこのころの縄文人たちは、
「ふくらんだ部分の丸さをだんだん強調し、それがきわまると、その部分を打ち抜いたかのように、窓や吹き抜けにする」
というデザイン上の癖をもっていたらしい。たとえば図6なら、ヘビの胴体がだんだんふくらんで、最後にはじけたようにみえる。
縄文デザインのこうした傾向は、釣手土器だけに見られるものなのか、それともほかに例があるのか? 調べる価値はあると思うが、できればこの先は専門家の方に、丸投げおまかせしたい気持ちでいっぱいだ。