神話とか、古代史とか。

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スサノヲとナマハゲ 1 - 木をつくる巨人

 ここからしばらく、「スサノヲと植物仮装来訪神」という論文(「はじめに」からダウンロードできる)の話がメインになる。多分だが、釣手土器のときほど長くはならないと思う。

 『古事記』の神話を読んだ人ならたいていスサノヲについて、「なんか知らんが、変な神だった」という感想をもっているだろう。スサノヲはまず、姉(アマテラス)の支配する天界で、好き勝手暴れて追い出されている。もういい年のはずなのだが(「あごひげが長く伸びていた」そうだ)、だだっ子の暴れん坊にしかみえない。

 が、追い出されて地上に降りてくると、いつの間に心を入れ換えたのか、ヤマタノヲロチを退治して女の子を救うヒーローになる。天界でシスコンをこじらせていた(多分)ころの残念さが、嘘のような変わりようである。

 でもまぁこれだけなら、
「善悪両面にはたらく両義的なキャラ、いわゆる『トリックスター』という奴だろ?」
 ということで納得できなくもない。が、『日本書紀』の神話を読んでみると、さらにおかしな場面がある。

 スサノヲはあるとき、こんなことを言った。
「韓郷(からくに。朝鮮半島のこと)には、金銀が多い。俺の子孫の国に船がなかったらよくない。」
 で、ひげを抜いて放つと、スギの木になった。胸毛を抜くとヒノキになり、尻の毛はマキ*1、眉毛はクスになった。こうして木ができるとスサノヲは、「スギとクスは船にしろ」などと、その使い道をも定めたという*2

 この話ではまた、スサノヲという神の印象が違う。スサノヲと言えば、一般的なイメージは、図1みたいな感じだろう。なんか古代っぽい服(埴輪が着ているような)を着た、ワイルドなひげの親父である。

f:id:calbalacrab:20171228213851j:plain図1 スサノヲ

 でも木をつくった方のスサノヲは、下手したら、図2のような感じではないか?

f:id:calbalacrab:20171228214123j:plain図2 スサノヲ?

 体毛が木になるくらいだから、小山のような巨人だろう。無造作に尻の毛まで抜くあたり、パンツとかはいてなさそうだ。こうなると、「トリックスター」とかなんとか言ってすませるには、ちょっと芸風が広すぎる。

 この「スサノヲとナマハゲ」では、主に図2の方の(これに近いタイプの)スサノヲをとり上げることになると思う。こっちのスサノヲこそ、スサノヲという神の本質に近いとみるからだ。ヤマタノヲロチ退治とかが目立ちすぎるからわかりにくくなっているだけで、元来スサノヲは、パンツとかはいてないのである。

*1:多分、コウヤマキ高野槙)のこと。常緑針葉樹。

*2:岩波文庫日本書紀(1)』1994年 100・102ページ。