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スサノヲとナマハゲ 6 - 陰謀じゃない方の秘密結社

 「植物仮装来訪神の共通点」(くわしくはこちら)シリーズ第3弾、「秘密結社、または男子結社を構成する」の話である。第1弾は第4回、2弾は第5回でやったので、未読の方は参照されたい。

 秘密結社という言葉には、男の子の男の子心(←?)を刺激する何かがあると思う。イルミナティとかゼーレとか、
「古代(または中世)から現代まで、歴史を動かしてきた影の組織!」
 的なものが出てくるとちょっとわくわくする。

 ここでとり上げる秘密結社はしかし、そういう陰謀団の類じゃない。民俗学文化人類学で言う秘密結社とは要するに、「秘密の儀礼を行う組織」である。存在はもちろん、構成員まで公開されてても、秘密の儀式さえやってれば、それだけで秘密結社なのだ。特に入会式(=「入社式」)の秘密が大事なので、「入社的秘密結社」と呼ばれたりもする。

 特定のメンバーだけでなく、その社会の成人男子(ほぼ)全員が参加する場合は「男子結社」という。女子結社の例もないではないが、男子にくらべると少ない。女子は普通、「秘密基地」をつくって遊んだりはしないので、まぁそういうものなんだろう。

f:id:calbalacrab:20180128224637j:plain図1 アカマタ・クロマタ*1

 植物仮装来訪神たちの祭の中で、秘密結社によって運営されるのは、日本ではアカマタ・クロマタ(図1。沖縄県八重山列島)だ。「トゥニギシキ」という秘密の儀式を経て、初めて入会が許されるというから*2、ばりばりの秘密結社である。

f:id:calbalacrab:20180113200743j:plain図2 ドゥク=ドゥク*3

 メラネシアでは、ニューブリテン島ドゥク=ドゥク(図2)結社がかなり有名で、『世界 謎の秘密結社』とか、そういう本にも普通に載っている。入社式はもちろん秘密だが、どうやら丸太でたたかれたり、バイオレンスな試練があるらしい*4。 

f:id:calbalacrab:20180302000147j:plain図3 ロム*5
※ 衣裳はバナナの葉っぱ。

 メラネシアでは、ほかにもアンブリム島のロム(図3)結社などは、やはり植物仮装である*6。アフリカ東海岸ポロ*7(図4)という秘密結社でも、写真で見る限り、植物仮装をやっているらしい*8

f:id:calbalacrab:20180301232738j:plain図4 ポロ*9

 ついでに言えば、ヨーロッパで聖ニコラウス(サンタクロース)の祭をとり仕切る「兄弟団」とか「友愛団」とかも*10、秘密結社の名残りとみていいんじゃなかろうか。

 さて。こうしてみると、植物仮装来訪神には洋の東西を問わず、やけに共通点が多い。多分だが、
秘密結社によって運営され、植物で祖霊や死霊に扮し、子供に説教する来訪神の儀礼
 が農耕文化とともに、広まった時期があるのだろう。

 ここまでは、植物仮装来訪神そのものの特徴をみてきた。次回から、植物仮装来訪神たちと、スサノヲとの関係について考えてみよう。

*1:ただしこれは、シロマタという第3の神。http://husigimystery.info/allan/wp-content/uploads/2017/05/akakuro.jpg

*2:『日本「鬼」総覧』新人物往来社 1995年 187ページ。

*3:https://c1.staticflickr.com/5/4026/4245368961_4cd0be807f_b.jpg

*4:『世界 謎の秘密結社』新人物往来社 1993年 462ページ。

*5:https://c1.staticflickr.com/3/2464/3644313056_2f4b876d2e.jpg

*6:http://explorcruises.com/pearls-coral-sea-port-vila-cairns/

*7:ドゥク=ドゥクはDuk Duk、ロムはRom、ポロはPoroと書かれることが多い。

*8:http://www.thecoli.com/threads/poro-african-secret-society.285920/

*9:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b3/A_Masked_Poro_dancer_from_Secret_Society_Wellcome_M0005352.jpg

*10:葛野浩昭『サンタクロースの大旅行』岩波書店 1998年 53~54ページ。聖ニコラウスと植物仮装来訪神については、第2回参照。