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「縄文―1万年の美の鼓動」展に行ってきた

 東京国立博物館(平成館)で9月2日まで、特別展「縄文―1万年の美の鼓動」をやっている。東京に用があったついでに見てきたので、その感想を。ちなみにこの展示は巡回しないから、東京行かないと見られない。

 さすが国立と言うべきか、日本中から容赦なく、優れ物をかき集めている。「釣手土器の話」でとり上げた縄文土器土偶たちも、一度に見られるから眼福だ。

 展示物の話をする前に、これから見に行く人のために、いくつか注意点を挙げておこう。

1. まだ展示されてないものもある。
 国宝の「縄文のビーナス」と「仮面の女神」(図1)が展示されるのは、7月31日から。見たい人はご注意を。

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図1 左:縄文のビーナス/右:仮面の女神*1

 ちなみにどっちも、尖石縄文考古館の展示物で、そこでなら写真も撮り放題。入館料も500円と安いし、長野の方が近い人なら、わざわざ東京で見るこたない。
2. 事前に図録(見本)を見て、的を絞った方がいい。
 何しろ展示物が多く、人も多い。全部じっくり見ようとすると、集中力がもたない。平成館のエスカレーターを上ったところ(展示会場の手前)に店があり、図録の見本があちこちに置いてある。会場入り前にこれを見て、見たいものを絞っておくのが吉。
3. 前半は飛ばすか、ざっと流す。
 みんな最初は熱心に見るから、特に前半は人の流れが遅い。が、「ザ・縄文」な逸品は、ほとんど後半で登場する。前半に人が多いとみたら、後回しにした方がいい。
4. 撮影コーナーも一応ある。
 普通特別展は撮影禁止だが、最後に置いてある4点くらいは写真撮ってもいい(フラッシュは不可)。

 で、肝心の見どころだが。国宝の「合掌土偶」「中空土偶」(図2)は、期間中いつでも置いてある(人は多いけど)。

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図2 左:合掌土偶/右:中空土偶*2

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図3 左・中:遮光器土偶/右:山猫土偶*3

 遮光器土偶や「山猫土偶」(図3)も傑作だが、これらはもともと東京国立博物館にある。ふだんは撮影可能だし、東京在住の人なら、特別展が終わってから見に行った方がいいかもしれない。ただ、展示されてないときもあるから、事前に確認を。

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図4 左:神像筒形土器/右:山猫土偶(裏)*4

 特におすすめなのは、井戸尻考古館から出張中の「神像筒形土器」(図4左)。縄文を代表する逸品だと思うが、それほど有名じゃないからゆっくり拝める。ちなみに神像(?)は正面ではなく、背中をこっちに向けているらしい。山猫土偶の背中(図4右)とくらべると、たしかによく似ている。山猫土偶を見るときは、ケースの横に回って背中もチェックしてくれると嬉しい(私だけが)。

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図5 左:大深山出土/中:御殿場出土/右:穴場出土*5

 「釣手土器の話」でお世話になった釣手土器たち(図5)が、一堂に会しているのもよい。大深山のは第5回6回、御殿場は第3回など、穴場は第13回で主にとり上げた。それぞれ、裏も要チェックだ。

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図6 左・中:御所前出土/右:月見松出土*6

 御所前や月見松の「顔面把手付土器」も展示されていた。御所前土器(第489回など)は裏(図6中)が肝心だが、横からしか見れないのが惜しい。これまたケースの横に回り、
「ほかの客たちは、裏にも顔があるとは思うまい」
 と、ほくそ笑んでもらいたい。
 月見松土器は、第1回で紹介した。縁の部分に、「縄文のビーナス」(その股間)とほぼ同じ文様があるので、見くらべてみるのも一興だ。

 ここに写真を載せた土器・土偶だけでも、全部実物を見ようと思ったら、長野や山梨を中心に、日本中の博物館を回らなくてはならない。これだけのものをいっぺんに見れるのはなかなかお得である。