神話とか、古代史とか。

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新版・世界の七不思議 3 - ボロブドゥールからティワナクまで

 「七不思議」候補(クラスA)*1のうち、後半は⑥のボロブドゥールから(前半はここ)。

ボロブドゥールインドネシア

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謎度: ☆☆☆
びっくり度: ☆☆☆☆☆
古さ: ☆☆
知名度: ☆☆☆☆

 ジャワ島の仏教遺跡である。いまはボロブドゥールだが、昔はよく「ボロブドール」と書かれていた。ちなみにボロブドゥールとは、「丘の上の僧院」といった意味らしい*2
 寺と違って内部構造はなく、全体の形は階段ピラミッドに近い。上から見るとわかりやすいが(図1)、方形6段+円形3段の9段(中央の塔を入れれば、10段)構造だ。

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図1 ボロブドゥール(上から)*3

 「世界の七不思議」としてボロブドゥールが、滅多に候補にもならないのは、控え目に言って許しがたい*4
 8世紀後半、シャイレーンドラ朝によって建てられたことはほぼたしかで、その意味で「謎度」はやや低い。でも見ての通り、小山のような威容(1辺約120m)であり、「世界最大の仏教遺跡」とされることもある。回廊のレリーフ、壇上に置かれた仏像群の美的な価値も高い。
 仏教建築には違いないが、ピラミッド状のこの姿がどこから来たかはっきりしないなど、謎の要素も結構ある。仏塔(ストゥーパ)の一種なのだろうが、インドその他の仏塔(図2)とは、全然違う形なのだ。

f:id:calbalacrab:20180913221957j:plain図2 サーンチーの仏塔*5

 前半でとり上げた遺跡たちにひけはとらないと思うので、この機会にぐっと推しときたい。

アンコール=ワットカンボジア

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謎度: ☆☆
びっくり度: ☆☆☆☆☆
古さ: ☆
知名度: ☆☆☆☆☆

 ボロブドゥールが東南アジアの島嶼部代表なら、大陸部代表は、やはりアンコール=ワットだろう。12世紀前半、アンコール朝最盛期の王・スーリヤヴァルマン2世によって築かれた、ヒンドゥー教の寺院である。
 12世紀前半と言えば、日本では平安時代の終わりごろ。あまり古くねえなと言われたら、まぁそうだねと言うほかない。が、濠の外周が南北1300m、東西1500mという圧倒的規模、加えて建築そのものや、彫刻群の美しさ。「世界ふしぎ発見」や『Newton』(2013年版)の「世界の七不思議」に選出されたのもうなずける*6(くわしくは第1回参照)。
 現代版「世界の七不思議」を選ぶなら、アンコール=ワット(または、これに代表されるアンコール遺跡群)は少なくとも、ノミネートはされるべきだろう。それすら満たさない「七不思議」選考は、その時点で失格だと思う。

グレートジンバブエジンバブエ共和国

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謎度: ☆☆☆☆☆
びっくり度: ☆☆☆☆☆
古さ: ☆
知名度: ☆☆☆

 ジンバブエ共和国は、アフリカ大陸南部にある。1980年にできたばかりの国で、国名はこのグレートジンバブエ遺跡に由来する。遺跡の名前がそのまま国名になってるんだから珍しい。グレートジンバブエに対する国民の思い入れの深さがうかがえる。
 文字記録がないから謎の部分が多いが、石造建築物は、11世紀から造られ出したらしい*7。この一帯を治めた首長一族(インド洋との交易で栄えた)の宮殿であり、祭祀の場でもあったようだ。
 ほかの遺跡にくらべたら、知名度は低いのかもしれない。でもたとえば、すごくないかこの城壁?(図3)

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図3 グレートジンバブエの壁*8

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図4 アクロポリス*9

 「アクロポリス」と呼ばれる建物の、自然の巨岩と一体化したような姿も迫力だし、これを候補にしない手はあるまい。ちなみに、「世界ふしぎ発見」版の「七不思議」(1997年)には、モアイやアンコールなどとともにきっちり選ばれた。

テオティワカン(メキシコ)

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謎度: ☆☆☆☆☆
びっくり度: ☆☆☆☆☆
古さ: ☆☆☆
知名度: ☆☆☆☆

 中米には巨大な都市遺跡がいくらでもあるが、1つ選ぶとすればテオティワカンだろう。マヤ文明ももちろん重要だが、似たような規模の遺跡がいくつもあり、1つに絞るのは難しい*10
 テオティワカンとは現地の言葉で、「神々の都市」という意味だ。紀元前200年ごろ建設が始まり、7、8世紀まで存続したらしい*11
 テオティワカン文明はマヤと違って、長文の石碑を建てなかった。文字らしきものも少しは見つかったが、まったく解読されていない*12。したがってその歴史には、マヤ文明以上に謎が多い(マヤ文字も未解読だったが、近年かなり解読が進んだ)。

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図5 太陽のピラミッド*13

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図6 月のピラミッド*14

 代表的な遺構は「太陽のピラミッド」(図5)で、底辺222×230m、高さ65.5m。ギザの三大ピラミッドの1つ、メンカウラー王のピラミッド(底辺108.5m、高さ61m)よりかなりでかい。「月のピラミッド」(図6)というのもあって、これまた壮観だ(底辺140×150m、高さ47m)*15。どっちもその大きさ以上に、姿の美麗さが素晴らしい。

ティワナクボリビア

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謎度: ☆☆☆☆☆
びっくり度: ☆☆☆☆☆
古さ: ☆☆
知名度: ☆☆☆

 テオティワカン文明はアステカ帝国(1428ごろ~1521年)以前、中米で栄えた。一方、ティワナク文明は南米で、インカ帝国(1438~1533年)以前に栄えており、テオティワカンとアステカの関係に近いところがある。ちなみにいまはティワナクだが、昔は「ティアワナコ」と呼ばれていたものだ。
 ティワナク遺跡の標高は約3800mで、富士山頂より高い場所にある。天空都市と呼ばれるマチュピチュ前回参照)より、1000m以上高いんだから恐ろしい。
 南米の文明*16はどれもそうなのだが、ティワナクも文字をもたないから、その歴史はよくわからない。西暦300年ごろから都市として、発展したという説*17を一応採用した。

f:id:calbalacrab:20180914212751j:plain図7 太陽の門*18

f:id:calbalacrab:20180914214053j:plain図8 ビラコチャ*19

 ティワナクと言えば太陽の門(図7)と、あとビラコチャの像*20(図8)が有名だ。
 ところでティワナクのビラコチャは、「手が変」なことで知られている。腹に両手を当てているが、よく見ると両方左手だ。

f:id:calbalacrab:20180914224001j:plain図9 ビラコチャの手*21

 ティワナクにはビラコチャの像が何体かあって、みんなこの手になっているらしい。『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画に「両右手」の悪役が出てきたが*22、何か関係があったりするのだろうか?
 本来はもっと巨大な石像(「ベネットBennett」の愛称で知られ、7mもある)もあったのだが、いまはティワナク博物館に展示されている(図10)。

f:id:calbalacrab:20180914233358j:plain図10 ベネット*23

*1:クラスAの顔ぶれは、「①ナスカの地上絵」「②イースター島」「③マチュピチュ」「④ストーンヘンジ」「⑤ギザのピラミッド」「⑥ボロブドゥール」「⑦アンコール=ワット」「⑧グレートジンバブエ」「⑨テオティワカン」「⑩ティワナク」。

*2:世界遺産「ボロブドゥール」の名前の由来

*3:https://lonelyplanetimages.imgix.net/a/g/hi/t/f4024c571e5e09ce5e4049bc181500b1-borobudur-temple.jpg?auto=enhance&w=1200

*4:たけしの新・世界七不思議」というTV特番(2012年)では、トルコの「アヤ=ソフィア」と七不思議入りを競い、負けにされていた。ますます許しがたい。

*5:https://i0.wp.com/www.nativeplanet.com/img/2017/05/1-31-1496217090.jpg

*6:2007年の「新・世界七不思議」でも、最終候補には入ってる。

*7:Great Zimbabwe - Wikipedia

*8:左:http://www.rontravel.com/Web_Photos_Happy_Cannibal/N_Zimbabwe/Zimbabwe_Great_Zimbawbwe.jpg/右:https://dudewereinafrica.files.wordpress.com/2012/01/great-zimbabwe-1-of-6.jpg

*9:http://i2.cdn.turner.com/cnnnext/dam/assets/150113083800-great-zimbabwe-4-super-169.jpg

*10:新・世界七不思議」や「たけしの新・世界七不思議」では、マヤの都市遺跡の1つであるチチェン=イッツァが選ばれた。が、ティカルやコパン、パレンケなどよりチチェン=イッツァを推すべき理由はないと思う。

*11:Teotihuacan - Wikipedia

*12:世界の文字「テオティワカンの文字」

*13:http://www.mesoamerica.de/mesoamerika/mexiko-zentral/mesoamerica-teotihuacan/sonnenpyramide/SANY0505.jpg

*14:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/72/Lascar_Pir%C3%A1mide_de_la_Luna_%28Pyramid_of_the_Moon%29_%284567206968%29.jpg

*15:これらの数字は、測り方で多少変動する。

*16:アンデス文明」と総称されている。中米のは「メソアメリカ文明」。

*17:Tiwanaku empire - Wikipedia

*18:https://st-listas.20minutos.es/images/2016-06/412079/4998704_640px.jpg?1466985415

*19:https://3.bp.blogspot.com/-Ldj9IhFoqEk/WlJANtPxs_I/AAAAAAABIl0/dPmknFqUFSgP7gBGGklyUNNXiNbVMh4TgCLcBGAs/s1600/peru%2B1635.JPG

*20:これが本当にのちのインカの神・ビラコチャ(「ウィラコチャ」とも)なのかはよくわからないが、とりあえずこう呼んでおく。

*21:http://isekineko.jp/P10300921.jpg

*22:アニメ観ただけで、あまりくわしくはない。

*23:http://mayankin.com/blog/sp/wp-content/uploads/2014/10/MayanKin-08-6-Monolith-Bennett.jpeg