前回の改良版「替え玉説」は、自分で言うのもアレだが、村岡素一郎氏のそれ（第3回参照）よりかなりましではある。じゃこの仮説、結構いい線いってるのかと言えば、正直なとこそうでもない。改良版の「替え玉説」（「人質時代すり替え説」）には、だいたい以…

今回は、「家康替え玉説」の弱点を指摘するとともに、ちょっと「修正」を加えてみる。長くなったから、目次つきだ。 1. 事実を知る人が多すぎる 2. すり替えの時期を早めてみる 3. 家康に高値がついた理由 4. 築山殿始末 5. 家康の馬術問題 6. 松平親氏とは…

村岡素一郎『史疑 徳川家康事蹟』*1（1902年）によれば、徳川家康は若いころ、三河の大名・松平元康と入れ替わることで、戦国武将としてデビューした。村岡説だと、その人生はなかなか入り組んだものだけど、ざっくりと要約しておこう。 ① 家康誕生 戦国時代…

徳川家康について、「被差別民（ササラ者、または願人坊主）の出身だ」という説があることは前回で書いた。これを唱えたのは、村岡素一郎（1850～1932年）という静岡県庁の役人さんである。村岡氏は1902年、『史疑 徳川家康事蹟』という本*1で、この仮説をど…

図1 カムイ伝*1 昔、白土三平の漫画『カムイ伝』に、「家康は簓者（ささらもの）の出身だ」という話が出てきた。ササラ者とは、ササラという楽器で伴奏しつつ、教訓めいた物語（説経節*2）を聞かせる芸能民のことだ。「説経節」というくらいだから、もともと…