2017年以降の論文
「はじめに」に追記するつもりでいたが、1つの記事があまり長くなるのはなんか嫌なので、別立てにしてみた。
2017年と2018年にそれぞれ2本ずつ発表し、今年はいまのとこ、「綏靖型暴君伝説の展開」だけ。あと1コくらい、年内に発表したいものだ。
以下例によって、「公開中のファイル」と「内容紹介」を。
1. ワカヒコ - タカヒコネ神話と昔話 PDF
(『比較民俗学会報』169号 比較民俗学会 2017年1月)
2. ウケヒと「競争的単性生殖」の神話 PDF
(『比較民俗学会報』171号 比較民俗学会 2017年7月)
3. 「物言わぬ子」と異類婿 PDF
(『比較民俗学会報』173号 比較民俗学会 2018年3月)
4. 東と西の「影鰐型」説話 PDF
(『説話・伝承学』26号 説話・伝承学会 2018年3月)
5. 綏靖型暴君伝説の展開 PDF
(『比較民俗学会報』178号 比較民俗学会 2019年3月)
「ワカヒコ - タカヒコネ神話と昔話」
『古事記』『日本書紀』に登場する、アメワカヒコとアヂスキタカヒコネの神話について考えてみたもの。やや扇情的に紹介すると、
「記紀神話の中では、知られざる『殺人事件』(?)が起きていた。その犯人は、そして被害者は誰か?」
という話でもある。ちなみに被害者が不明なのは、探偵小説でもそこそこ珍しいパターンだ。
「ウケヒと『競争的単性生殖』の神話」
日本神話には、アマテラスとスサノヲの姉弟が「ウケヒ」という勝負をする場面がある。
「それぞれ自分の子供をつくって、その性別で優劣を決めようぜ!」
という勝負だ。こう書くとわけがわからないが、現物を読んでもやっぱりわけがわからない。
そんなウケヒ神話ではあるが、実は世界には、よく似た神話がいくつかある。中でも特に似てるのが、ヤズディ教(中東の謎の宗教の一つ)の創世神話である。
というわけで、それらを並べて比較してみれば、少しはわかりやすくなるんじゃないかと、試してみたのがこの論文。ちなみに有名なところでは、ギリシア神話にも似た話がある。
「物言わぬ子」と異類婿
ホムツワケやアヂスキタカヒコネは、割といい年になっても口が利けなかったと言われている。いろんな解釈が発表されてるが、そんなに難しくないんじゃないの、というお話。
要はこの人ら、動物(ヘビなど)の姿で生まれたから、しゃべれなかっただけなんだろう。世界各地の昔話には、ちゃんとそういうのがあるのである。
東と西の「影鰐型」説話
「影鰐型」とは、
「自分で殺した動物の骨を足蹴にしたら、骨が刺さって死んだ人」
の話。実は国際的な話型だが、なぜだかあまり知られてない。もったいないから比較分析などしてみた。日本とヨーロッパの例が多いけど、これは単純に情報源が偏っているせいだろう。
綏靖型暴君伝説の展開
「天皇が人を喰ったから(または人の生き血を吸ったから)、岩屋に閉じ込めて始末した」
という話が、中世からいくつか記録されている。フィリピンにもそっくりな話があって、日本固有というわけでもなさそうだ。
このパターンの話を、世界各地の神話・伝説――特に、火山や地震の物語と比較してみた。アーサー王とかバルバロッサとか、ヨーロッパの「眠れる英雄」譚にも寄り道した。