2017-01-01から1年間の記事一覧
ここからしばらく、「スサノヲと植物仮装来訪神」という論文(「はじめに」からダウンロードできる)の話がメインになる。多分だが、釣手土器のときほど長くはならないと思う。 『古事記』の神話を読んだ人ならたいていスサノヲについて、「なんか知らんが、…
もはや古代史でもなんでもないが、「ナポレオン」という名前がふと気になったことがある。あたりまえだが、彼のフルネームは「ナポレオン=ボナパルト」。特に世界史では、歴史上の人物は苗字で呼ばれるのが普通である。なぜナポレオンは苗字(ボナパルト)…
その昔、『アーサー王の死』という本を読んだことがある。トマス=マロリーが15世紀に書いた本で、数ある「アーサー王伝説まとめ本」の中でも、集大成と言われてるらしい。 でもこの『アーサー王の死』というタイトルは、もうちょっとどうにかならなかったも…
谷川健一『白鳥伝説』(集英社)234ページによれば、兵庫県養父郡養父村の「大上川養布神社」に、「降り鐘」というのが祀られてる。物部川から石をとり出して、このお宝を乗せとくと、必ず雨が降るのだという。降り鐘と言ってもお寺の鐘ではなく、弥生時代(…
釣手土器について、語りたいことは語り終えたので、今回でひとまず終わりである。最初から(途中からでも)最後まで目を通してくれた人がいるのかどうかわからないが、もしいたとしたら感謝に堪えない。 ちょいちょい脱線もしたが、このシリーズ(?)の眼目…
論文を載せてくれる(数少ない)学会――比較民俗学会の大会(11月4~5日)に参加し、発表もしてきた。 http://norinagakinenkan.com/whats/hikaku2017.html 特にとちりもせずしゃべれたのはいいが、発表の後会場が、「きょと~ん」な空気になったのはなぜだ。…
第32回で、「3面(裏が双面)の釣手土器」(図1)と富士の噴火には、関係があるんじゃないか、的なことを書いた。火口も女性器も、古い言葉では「ホト」という。火口=性器なら、複数の火口から火を噴く富士は、女神が増殖したように見えたかもしれないとい…
図1 井荻三丁目出土*1 前回、井荻三丁目遺跡の釣手土器(図1)について、「噴火する火山そのものに」見えるとした。ところでこの井荻釣手土器には、ヘビの頭が4つついている。これは多分、死の象徴としてのヘビだろうが(第20回)、火山活動(溶岩流など)を…
多分釣手土器は、「火を出産して死に、死後の世界の支配者になる」 というタイプの女神を表している。第3回以来、これはもう何度も書いてきた。のちのイザナミに連なる神なので、仮に「プロト=イザナミ」と呼んでおこう。 ところで釣手土器は、縄文時代中期…
第14回で、「裏が双面の釣手土器」(図1)にちょっとだけ触れた。今回は、もう少し突っ込んで考えてみたい。と言っても、のっけから残念なお知らせでアレだが、特に目覚ましい仮説はいまのところない。第25回や27回と同じく、「こうかもしれないし、違うかも…
前回、「型式編年」の話をした。ところで伊集院卿ほか『日本ピラミッド超文明』(学習研究社 1986年)では、この型式編年が、けちょんけちょんにけなされている。 日本の考古学は、土器の編年に終始しているといってもよい。土器の編年というとたいへん聞こ…
いまさらだが、「釣手土器の話」のそもそもの趣旨は、昔書いた論文「吊手土器の象徴性(上)(下)」(「はじめに」からダウンロードできる)を解説してみよう、というところにある。なるべくわかりやすくと言うか、ゆる目の内容にしたいので、説明がややこ…
第15回で、「釣手土器の主なデザインは、顔面把手付土器の『ふくらんだところ』を窓にすることで生まれたものらしい」 的なことを書いた。「ふくらんだところ」とは、顔面把手の顔(表)の部分や、「目ばかりの顔」(裏)の目の部分だ(図1~3)。図1 顔面把…
前回に続き、ツチノコ(ノヅチ)の正体について、思いつく限り仮説を立てようという話である。まずとり上げるのは、「②ヤマカガシの突然変異」説だ。この説を語るには、17年前の事件から始める必要がある。 2000年5月21日、岡山県吉井町(現・赤磐市)で、太…
図1 札沢出土*1 図2 ノヅチ - 上:『信濃奇勝録』/下:『野山草木通志』*2 釣手土器――特に札沢遺跡のそれに乗ってる太短いヘビたち(図1)は、「ノヅチ」(ツチノコ)のプロトタイプじゃないのかなぁと、第21回で書いた。ちなみにノヅチとは、図2のようなヘ…
釣手土器の世界では、ヘビは「死」、イノシシは「生」の象徴だったんじゃないかと、前回で書いた。釣手土器の表(窓が1つしかない方)は「生」の世界だから、主にイノシシが現れる。一方裏は「死」の世界だから、ヘビが強調されておるのだろう、という解釈だ…
釣手土器の上にはだいたいにおいて、変なヘビたちが乗っている。中でも特に変なのは、北原遺跡(山梨県甲州市)の釣手土器(図1)だ。第19回以来何度かとり上げてきたが、あらためてフィーチャー*1してみよう。 図1 北原出土*2 図1でおわかりの通り、どうい…
『比較民俗学会報』171号に、「ウケヒと『競争的単性生殖』の神話」という論文を発表した。今年2本目の論文だ。 『古事記』『日本書紀』には、「アマテラスとスサノヲの姉弟が、『ウケヒ』という呪術でそれぞれ子をつくり、その結果で優劣を決める」 という…
札沢遺跡出土の釣手土器(図1)には、ノヅチ(ツチノコ)関係でこのところお世話になっている。今回はヘビだけでなく、土器全体のデザインに注目してみよう。 図1 札沢出土*1 釣手土器の裏側(窓が複数ある方)は、たいてい「目ばかりの顔」になってると、こ…
釣手土器の話と題してるが、今回は釣手土器あまり関係ない。八雷神の1柱である「野雷」をノヅチと読んで、いいのか悪いのかという話だ。 まず、岩波文庫の『日本書紀(1)』を見ると、普通に「のつち」とルビが振ってある(54ページ)。厳密にはノヅチじゃな…
図1 札沢出土*1 第19回で、札沢遺跡出土の釣手土器(図1)に乗ってるヘビについて、「ツチノコのよう」だと形容した。今回はこれ、ほんとにツチノコと何か関係あるんじゃないの、という話だ。こう書くと、「このブログ、いよいよ(本腰入れて)トンデモに走…
死んだイザナミがヘビたち(八雷神)をまとわりつかせていたのと同じように、釣手土器裏側の「目ばかりの顔」もヘビまみれだった(前回参照)。 図1 左:御殿場出土/右:曽利出土*1※曽利例の首から上は、推定復元。 ここまでで、釣手土器(特に、顔面把手付…
というわけで今回は、「釣手土器裏面にちょいちょい現れる、逆立った髪の毛みたいなもの」(図1)が、ヘビかどうかという話である。 図1 左:曽利出土/右:御殿場出土*1 むろん曽利例や御殿場例だけなら、肝心のヘビの頭がないので(図2参照)、正直いかん…
で、イザナミの死体に生じた「八雷神」が、ヘビかどうかという話である。これについては日本の古い文献に、雷神が実際ヘビとして描かれた話がいくつかある。まずは『日本書紀』から、小子部蜾蠃(「ちいさこべのすがる」と読む)という人が、三輪山の神を捕…
特にここからはイザナミ神話が重要になるので、その内容をまとめておく。なお、最初にお断りしておくと、今回は字ばっかりだ。 イザナミは、イザナギという神と結婚し、日本列島その他を産み出した。でも最後に火の神(カグツチ)を産んだので、焼け死んでし…
釣手土器の裏側(窓が複数ある方)は、多くの場合顔になっている。それはいいとして、なぜこんな変わった顔なのか? 図1 左:大深山出土/右:御所前出土*1 釣手土器背面のデザインとして、一番多いのはいわゆる「目ばかりの顔」だ(似たようなものは、顔面…
釣手土器のデザインはだいたいにおいて、顔面把手(付土器)をリスペクト(?)していることが多い。第4回以来、しつこく書いてきたことだが、改めておさらいしておこう。 まず曽利遺跡の釣手土器(図1右)は、御所前顔面把手付土器(同左)の「胎児」の顔の…
図1 穴場出土*1 穴場遺跡の釣手土器はその背面(窓が複数ある方。図1)に、「目ばかりの顔」を2つ並べている。ここまでは、前回書いた通りである。これに似たような例としては、藤内遺跡(長野県富士見町)や東吹上遺跡(群馬県高崎市)出土の釣手土器がある…
この2回ほど脱線したが、ここで釣手土器背面の話に戻ろう。 第6~10回で、釣手土器の背面が(多くの場合)顔なんだろうな、と思わせる状況証拠をいくつか挙げてきた。自分的にダメ押しと言うか、とっておきの証拠として推したいのは、穴場遺跡(長野県諏訪市…
前回とり上げた3つの顔面把手の中でも、二宮森腰遺跡のもの(図1)は一風変わっている。 図1 二宮森腰出土*1 表が丹下左膳状態*2なのもアレだが、裏側の顔(?)は両目が渦巻きで、「目を回した人」の古典的表現のようだ。 これとほぼ同じデザインは、花上寺…