釣手土器の話 12 - 渦巻きな目の人
前回とり上げた3つの顔面把手の中でも、二宮森腰遺跡のもの(図1)は一風変わっている。
図1 二宮森腰出土*1
表が丹下左膳状態*2なのもアレだが、裏側の顔(?)は両目が渦巻きで、「目を回した人」の古典的表現のようだ。
これとほぼ同じデザインは、花上寺*3遺跡出土の「人体装飾付土器」(図2)にもある。
図2 花上寺出土
「目」にあたる部分はやはり渦巻きで、その間をヘビがはい上がっている。ちなみにヘビの頭の形は、海戸遺跡の顔面把手裏側(図3。くわしくは前回参照)のそれにそっくりだ。
図3 海戸出土
真ん中をヘビがはい上がるという特徴から、花上寺土器のこの部分も、例の「目ばかりの顔」だろう。「目を渦巻きで表してみよう」と思いつく人は、案外昔からいたらしい。
ちなみに渦巻きの目と言えば、マヤの太陽神・キニチ=アハウ様(図4)も外せないところだ。いつ見ても、夢に出てうなされそうなこの圧の高さが素晴らしい。
*1:中村耕作「顔面把手と釣手土器」(神奈川県考古学会『考古論叢神奈河』17集 2009年)より。
*2:欠損によるものではなく、もともと右目が十文字だった。
*3:「かじょうじ」と読む。
*4:https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/564x/4c/1d/df/4c1ddf7924a4b5e08be108599b4eb4f2.jpg