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釣手土器の話 15 - ふくらんだところが窓になる

 釣手土器のデザインはだいたいにおいて、顔面把手(付土器)をリスペクト(?)していることが多い。第4回以来、しつこく書いてきたことだが、改めておさらいしておこう。

 まず曽利遺跡の釣手土器(図1右)は、御所前顔面把手付土器(同左)の「胎児」の顔の部分を窓にしたようなデザインだ(第4回参照)。

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図1 左:御所前出土/右:曽利出土*1

 より一般的な釣手土器(顔面把手がないもの)だと、顔面把手の顔にあたる部分が窓になっている(図2。第5回参照)。私が勝手に、「顔面把手ブチ抜き型」と呼んでいるアレだ。

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図2 左:海道前C出土/右:大深山出土*2

 そして釣手土器の背面も、やはり顔面把手の裏側に見られる奇妙な顔――一応「目ばかりの顔」と呼んでいる――の、目の部分を窓にすることで成立したらしい(図3。第13回など)。

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図3 左:富士見台出土/右:大深山出土*3

 こうしてみると、釣手土器のデザインには、一定の法則があるようにみえる。

 まず、顔面把手の顔の部分はたいていの場合、横から見ると半球状に盛り上がっている。それはもちろん、「胎児」の顔についても言えることだ(図4)。

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図4 左:海戸出土/右:御所前出土*4

 背面の「目ばかりの顔」にしても、表側ほどではないものの、やはり目の部分は丸くふくれている(図5)。

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図5 左:御所前出土/右:富士見台出土*5

 つまりどうやら釣手土器は、表裏とも、「顔面把手(付土器)のふくらんだところをブチ抜いて、窓にしたような」デザインになっているのである(図6~8)。

f:id:calbalacrab:20170313215043j:plain図6 顔面把手付釣手土器の場合

f:id:calbalacrab:20170313215211j:plain図7 普通の釣手土器の場合

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図8 釣手土器背面の場合

 この「ふくらんだところをブチ抜く」というコンセプトは、また後でとり上げることになると思うので、心に留めておいていただきたい。

*1:左:『八ケ岳縄文世界再現』新潮社 1988年より。/右:『井戸尻 第8集』富士見町井戸尻考古館 2006年より。

*2:左:https://www.pref.yamanashi.jp/maizou-bnk/topics/101-200/images/kaodoumaehanakokakudai1.jpg/右:http://line.blogimg.jp/kondaakiko/imgs/2/2/22598148.jpg

*3:左:拙論「吊手土器の象徴性(上)」(大和書房『東アジアの古代文化』96号 1998年)より。/右:http://content.swu.ac.jp/rekibun-blog/files/2012/05/PB130363.jpg

*4:右:http://livedoor.4.blogimg.jp/vipsister23/imgs/6/e/6e3444ca.jpg

*5:左:森浩一『図説日本の古代(2)木と土と石の文化』中央公論社 1989年より。/右:拙論「吊手土器の象徴性(上)」(大和書房『東アジアの古代文化』96号 1998年)より。