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神話とか、古代史とか。

日本をはじめあちこちの神話や古代史、古代文化について、考えたこと、わかったこと、考えたけどわからないことなど。

釣手土器の話 17 - 死んだイザナミと八雷神

 特にここからはイザナミ神話が重要になるので、その内容をまとめておく。なお、最初にお断りしておくと、今回は字ばっかりだ。

 イザナミは、イザナギという神と結婚し、日本列島その他を産み出した。でも最後に火の神(カグツチ)を産んだので、焼け死んでしまう。

 妻を失ったイザナギは怒り、迷わずカグツチの首をはねる(酷)。で、イザナミを連れ戻そうと、黄泉国(死後の世界)へ向かった。

 黄泉国でイザナギは、「帰ってきてくれ」とイザナミに頼んだ。イザナミは、
「なんとかならないか、こっちの神様と相談してみるわ。でもその間、明かりをつけて私を見ちゃ駄目よ?」
 的なことを言う。こういう場合のお約束で、もちろんイザナギは見るのである。

 さっきまで普通に話していたイザナミだが、明かりをつけるとどういうわけか、腐乱死体である。イザナギはとっとと逃げ出して、追いかけられてもなんとか逃げ切って、黄泉国の入り口を巨石でふさいだ。

 イザナミは怒り心頭で、
「あんたがそういう態度なら、毎日地上の人間を、1000人くびり殺してやる!」
 と、怖いことを言う。イザナギは、
「じゃ、こっちは毎日1500人ずつ生まれるようにするわ」
 と言って、イザナミとは喧嘩別れした。以来イザナミは、「黄泉津(よもつ)大神」=黄泉国の支配者と呼ばれるようになったという。

 要するにイザナミという人は、あらゆる生命を産み出した母なる女神であるとともに、容赦なくこれを回収する死に神でもある。典型的な大母神であり、心理学とかで、グレート・マザー(太母)と呼ばれる例のアレだ。ここからは、死の女神としてのイザナミに注目して話を進めよう。

「釣手土器裏側のデザインには、死んだイザナミのイメージに近いものがある」
 と、前回で書いた。ではその死んだイザナミは、どのような姿だったのか? もちろん死んでいるわけだから、普通に腐ったりウジが湧いたりしてたのだが、『古事記』『日本書紀』によれば、どうもそれだけではないらしい。イザナミの死体からは、「八雷神」と呼ばれる謎の神々が発生していたと言われている。

 頭には大雷居り、胸には火雷居り、腹には黒雷居り、陰には析雷居り、左の手には若雷居り、右の手には土雷居り、左の足には鳴雷居り、右の足には伏雷居り、あはせて八の雷神成り居りき。
(『古事記』)

 首に在るは大雷と曰ふ。胸に在るは火雷と曰ふ。腹に在るは土雷と曰ふ。背に在るは稚雷と曰ふ。尻に在るは黒雷と曰ふ。手に在るは山雷と曰ふ。足の上に在るは野雷と曰ふ。陰の上に在るは裂雷と曰ふ。
(『日本書紀』)

 頭と胸が、それぞれ「大雷」と「火雷(ほのいかづち)」で、性器が「さくいかづち(析雷/裂雷)」なのは、『古事記』も『日本書紀』も同じである。それ以外は発生した場所とか名前とかがいろいろ違ってるが、とにかくどちらも8柱の雷神がいたのは変わらない。

 この雷神さんたちのヴィジュアルについて、記紀に具体的な描写はない。が、これはどうやらヘビの神だったのではないかと言われている。というところで、長くなったので、ここまでにしよう。