新版・世界の七不思議 2 - まずは候補を挙げてみる
ここからしばらく、「七不思議」の候補を並べて品評してみたい。数が多いので、一応「クラスA・B・C」の3つに分類した。
で、まずクラスAの顔ぶれは次の通りである。
① ナスカの地上絵(ペルー)
② イースター島(チリ)
③ マチュピチュ(ペルー)
④ ストーンヘンジ(イギリス)
⑤ ギザのピラミッド(エジプト)
⑥ ボロブドゥール(インドネシア)
⑦ アンコール=ワット(カンボジア)
⑧ グレートジンバブエ(ジンバブエ共和国)
⑨ テオティワカン(メキシコ)
⑩ ティワナク(ボリビア)
なお、「国や地域が偏らないように」とか、そういうのは考慮していない(実際、南米から3つエントリーしてる)。遺跡自体が「七不思議」にふさわしいかどうかが重要だ。
今回は、⑤の「ギザのピラミッド」までを紹介していこう。ちなみにそれぞれの遺跡について、「謎度・びっくり度・古さ・知名度」(前回参照)を、それぞれ☆で表してみた(5段階評価)。「古さ」の判定基準は、こんな感じ(↓)。
紀元前2000年以前: ☆☆☆☆☆
前2000~1000: ☆☆☆☆
前1000~紀元前後: ☆☆☆
紀元前後~後1000: ☆☆
後1000~1500: ☆
じゃ、行ってみよう。
① ナスカの地上絵(ペルー)
現代版「世界の七不思議」を選ぶとき、ナスカの地上絵をはずそうという剛の者は、さすがにあまりいないのではないか? それくらい、誰が見ても不思議と言うか、端的に「変」な遺跡である。だいたい、
「巨大な絵とか図形とかを、真上に向けて描こうぜ!」
という発想が謎だ。それを1つの文明集団が数百年間続けたんだから、どうかしてるとしか思えない。
ちなみに、地上絵が描かれた時代については諸説あるが、ここでは「紀元前200年ごろ始まった」という説*1を一応採用した。
② イースター島(チリ)
世界遺産としての正式名称は、「ラパ=ヌイ国立公園」という。南米・チリの領土だが、イースター島(ラパ=ヌイ*2)は地理的には、ポリネシア(南太平洋東部)に属している。
これもナスカの地上絵とともに、異論が出にくい遺跡だと思う。さほど広くもない絶海の孤島(163.6km2*3)に、約900体もの巨大立像(モアイ)がごろごろしてる時点ですでにどうしようもない。しかもここにはどういうわけか、「ロンゴ=ロンゴ*4」という未解読文字(図1)まである始末だ。
図1 ロンゴ=ロンゴ*5
ただ、モアイが造られ始めたのは多分1250年ごろで*6、時代性はかなり新しい(だから「古さ」は☆1つ)。が、そもそもこの島に人間が定住し出したのは12世紀あたりだそうだから*7、その他の土地と同列にくらべるのは酷というものだ。むしろ人間が住み始めたばかりでこんなのを造れたというのが驚異である。
③ マチュピチュ(ペルー)
「天空都市」と呼ばれてるが、それも納得の景観だ。標高2430mのやたら険しい山の上に、都市を築こうという発想についていけないと言うか、むしろぜひついていきたいと言うべきか。
太陽信仰の聖地だろうと推定されてるが、文字記録はないし、まだまだ謎の部分が大きい。15世紀の遺跡であり、イースター島のモアイとくらべても、新しいのが玉に瑕だ。
図2 コンドルの神殿*8
ちなみにマチュピチュには「コンドルの神殿」*9といって、天然の巨岩でコンドルの翼が表現された場所がある(図2)。美麗な印象のあるマチュピチュだが、この荒々しい造形もよい。
④ ストーンヘンジ(イギリス)
ヨーロッパには、巨石記念物と呼ばれる遺跡が無数にある(図3のカラニッシュ*10列石とか)。その中で一番有名なのは、やはりストーンヘンジだろう。
先史時代の遺跡だから、上3つよりずっと古い。紀元前3100年ごろから造られ始めて、前2400年までに、ほぼ現在の姿になったらしい*11(それでも巨石記念物の中では、かなり新しい方である*12)。
ストーンヘンジ(これに代表される巨石記念物)は、予備知識なしでもなぜか謎めいて見える。「建材」としての石ではなく、石そのものが主役だから、ピラミッドなどとは異質なのだ。「この石たち、なんか違う!」と本能で感じるものがあるのだろう。
⑤ ギザのピラミッド(エジプト)
写真だと、真ん中のピラミッド(カフラー王のピラミッド)が一番でかく見える。でも実際は一番奥、クフ王のピラミッドが最大で、しかも古い。紀元前2560年ごろだから、ストーンヘンジとほぼ同時代だ。
カフラー王のピラミッドの東には、もれなく「ギザの大スフィンクス」(図4)がある。ピラミッドの付帯施設だし、
「ギザのピラミッドと言えば、スフィンクスを含むに決まってるでしょ」
ということにしたい。
エジプトのピラミッドは通説通り、ファラオ(王)の墓だろうし*15、用途は別に謎ではない。でもいまだにどうやって建てたかも、諸説あってよくわからない。最近も、クフ王のピラミッド内部に未知の空間が見つかったりと*16、まだまだ謎の遺跡である。見慣れてるからいまは驚かないが、初見のときはこの「四角錐!」な姿にも、圧倒された記憶がある。
ちなみに例の空間だが、映画とかだと、絶対開けたらダメな奴だろう。クフ王の時代、エジプトの魔術師集団がやっとの思いで封印した大怪獣とかが、蘇るアレに違いない。
*2:Rapa Nui。現地語で、「広い島」的な意味だそうだ。
*3:八王子市(186.4km2)より、やや小さい。
*4:アルファベットだと、Rongrongo。
*5:http://imaginaisladepascua.com/wp-content/uploads/2013/08/Rongo-rongo-001.jpg
*8:http://tripologia.com/wp-content/uploads/2015/09/DSCN9764.jpg
*9:「コンドルの祭壇」とも。
*10:アルファベットだと、Callanish。
*12:ヨーロッパ最古の巨石記念物は、アルメンドレス環状列石(ポルトガル)。紀元前6000年ごろにさかのぼる。Almendres Cromlech - Wikipedia
*13:https://ianrolfephotography.files.wordpress.com/2013/07/standing-stones-callanish-s0194-11x17-copy.jpg
*14:http://madophe.e-monsite.com/medias/album/67-gizeh-sphynx.jpg
*15:ピーター=ジェイムズほか『古代文明の謎はどこまで解けたか(1)』太田出版 2002年 295~296ページや、ウィリアム=H=スタイビングJr. 『スタイビング教授の超古代文明謎解き講座』太田出版 1999年 80~83ページ。王墓説は「否定される傾向」にあると、日本語のWikipediaには書いてあるが、英語版にはない。エジプト考古学の動向を踏まえた話ではなさそうだ。