新版・世界の七不思議 5 - ナン=マドールとギョベクリ=テペ
「七不思議」候補(クラスB)*1の第2弾は、④のナン=マドールから(第1弾はここ)。
④ ナン=マドール(ミクロネシア連邦)
ミクロネシアの島の1つ、ポンペイ島(ポナペ島とも)の遺跡である。「ナンマトル」というのが現地の発音に近いらしいが、「ナン=マドール」と書いてある本の方が多い気がするから、こっちを採用した。
浅瀬に細長い岩*2を積み重ねることで、人工の島が100基以上も築かれ、その上に都市遺跡がある。西暦500年ごろから造られ出したらしい*3。
図1 ナン=マドールの平面図*4
奇岩をログハウスみたいに組み上げたこの工法は、他に例がない。だいたい海中に島を造り、これを都にしてしまおうというのが常識外である。イースター島のモアイ(第2回)とともに、太平洋巨石文化の双璧だ。知名度はちょっと低いけど、もっと注目されてもいいと思う。
⑤ ギョベクリ=テペ(トルコ)
これもどうやら日本では、いまひとつ知られてなさそうだ。でも歴史的な重要さで言えば、いままでとり上げた中でもダントツかもしれない。
ギョベクリ=テペはひと言で言えば、「巨石神殿」の遺跡である。巨石が円形に並んでるから、ストーンサークル(環状列石)の一種とみることもできる。丸い建物の内側に、T字形の巨石が並ぶあたり(図2)、ヨーロッパなどのシンプルなストーンサークルとはちょっと違う。巨石は高さ約6メートルで、1つ1つがかなりでかい。そんな神殿が20基ほどもあるんだから、なかなか壮大だ。
図2 建設当時の想像図*5
ギョベクリ=テペの最大の「売り」は、その古さにある。およそ紀元前9000年、いまから約1万1000年前の遺跡なのだ*6。ヨーロッパ最古の巨石神殿は、マルタ島のジュガンティーヤ(前3600年ごろ。前回参照)だが、それより5000年以上古い。やはりヨーロッパ最古のストーンサークルであるアルメンドレス環状列石(ポルトガル。前6000年ごろ)*7とくらべても、3000年前だ。「古さ」だけならほんとのとこ、星(☆)10個つけてもお釣りがくる。
そもそも1万1000年前と言ったら、まだ旧石器時代である。都市文明はおろか、農耕も始まってはいない。農耕がないなら当然、定住生活もない。小さな集団で、移動しながら木の実を集めたり、動物を追い回したりしてるころだろう。そんなご時世に、巨石神殿など建ててしまう人々がいたとは普通、想像もつかない。この遺跡の存在自体がややもすると、嘘みたいというのが正直なとこだ。
図3 腕のある巨石*8
ちなみにT字の石柱は、人間を表してるらしい。腕と手が表現されてる石(図3)もあるから、間違いないだろう。ギョベクリ=テペから出土した、より写実的な人物像(図4)を見ても、だいたい同じポーズである。
図4 ギョベクリ=テペの石像*9
*1:クラスBの顔ぶれは、「①マルタ島の巨石神殿(マルタ共和国)」「②モヘンジョ=ダロ(パキスタン)」「③カッパドキアの地下都市(トルコ)」「④ナン=マドール(ミクロネシア連邦)」「⑤ギョベクリ=テペ(トルコ)」「⑥エル=ミラドール(グアテマラ)」「⑦カルナック列石(フランス)」「⑧ネムルト=ダウ(トルコ)」。
*2:「柱状節理」という現象で、自然にこの形になったもの。
*3:片岡修ほか「ミクロネシア連邦ポーンペイ島のナン・マドール遺跡とシャウテレウル王朝期の遺跡について」。ここからダウンロードできる。
*4:https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8d/Map_FM-Nan_Madol_ja.png
*5:https://cdn.lopezdoriga.com/wp-content/uploads/2015/09/gobekli_tepe_post.jpg
*7:Almendres Cromlech - Wikipedia
*8:左:http://asorblog.org/wp-content/uploads/2017/07/08_P18.jpg/右:https://tepetelegrams.files.wordpress.com/2016/06/09_zentralpfeiler-7.jpg?w=1040
*9:https://i.pinimg.com/originals/48/fd/d0/48fdd0238547881f6271975203af590c.jpg