神話とか、古代史とか。

日本をはじめあちこちの神話や古代史、古代文化について、考えたこと、わかったこと、考えたけどわからないことなど。

2017-01-01から1年間の記事一覧

釣手土器の話 11 - これらも多分顔だろう

第8回で、顔面把手の裏側が「目ばかりの顔」になってる例として、南養寺や御所前のものを挙げた。一応写真も貼っておこう(図1)。 図1 左:南養寺出土/右:御所前出土*1 でももちろん、裏に顔らしきものをもつ顔面把手は、この2つだけではないのである。釣…

釣手土器の話 10 - ひょっとこ顔の釣手土器

前回、曽利遺跡出土土器の人体装飾(図1左)が、「口を開けたヘビ」を頭に乗せていることに注目した。 これとほぼ同じデザインは、井荻三丁目遺跡*1(東京都杉並区)出土の釣手土器(図1右)にもある。 図1 左:曽利出土/右: 井荻三丁目出土*2 ひょっとこ…

釣手土器の話 9 - 頭上に口を開けたヘビ

図1 御所前出土*1 御所前遺跡出土土器(図1)の人体装飾には、目だけがやけに強調された奇怪な顔面がついていた(前回参照)。これと似たようなデザインは、縄文土器には結構ある。その中で、特に御所前土器に近いのは、曽利遺跡から出た「人体装飾付土器」…

釣手土器の話 8 - 顔面把手、裏の顔

引き続き、「釣手土器背面の2つの窓が、目を表してるかどうか」という話だ。これを考える上では、顔面把手と呼ばれる遺物が参考になる。釣手土器のデザインには、顔面把手付土器が大きな影響を与えているからだ(第5回参照)。 で、顔面把手の裏側を観察して…

釣手土器の話 7 - 真ん中のこれはヘビだろう

前回に続き、釣手土器背面の話である。 釣手土器の背面でまず目立つのは、真ん中を上下に走る「ベルト」だろう。なにやら複雑な模様が刻まれているが、これはどうやらヘビを表しているらしい。たとえば曽利釣手土器のこの部分を、同じく曽利遺跡出土の「蛇身…

釣手土器の話 6 - この裏面は顔なのか?

釣手土器正面の話はこれくらいにして、ここから裏側(図1。窓が2つある方)の話である。これは本当に、「死んだ女神の頭部」なのか? まぁ死んでるかどうかはおいとくとしても、さしあたり顔なのかどうかが問題だ。 図1 左:曽利出土/右:御殿場出土*1 ちな…

釣手土器の話 5 - シンプルな方の釣手土器

釣手土器はお祭用なので、縄文土器の中でもかなり凝ったつくりになっている。でももちろん、顔面把手までついているものは、全体の中のごく一部だ。その他の釣手土器はもう少し地味で、たとえば図1(長野県富士見町、井戸尻遺跡出土)のようなものが多い。 …

釣手土器の話 4 - 火を産む神

ここでようやく本題の、文様解読の話になる。 まず注目してみたいのは、曽利遺跡から出た釣手土器(その正面側)の造形だ(図1)。これは果たして本当に、「火を産み出す女神」の姿なのか? 図1 曽利出土(くどいようだが、首から上は推定復元)*1 この点を…

釣手土器の話 3 - 縄文土器とイザナミ神話

縄文時代の中期だから、いまからだいたい5000~4000年くらい前のことだ。関東・中部地方、特に長野県で、「釣手土器」というちょっと変わった土器がつくられた。 ランプとして使われていたようだが、実用品ではなく、お祭の道具とみられている。全体豪勢な土…

道祖神の話 1 - 章ごとの内容

「はじめに」にも書いたが、「道祖神と近親相姦」には論文が7つ入ってて、長い。その内容を数行でまとめるのはちょっと無理なので、ここでくわしく紹介しておこう。ちなみに()内の数字は、『怪』誌上のページ番号だ。 I 誰がサヨヒメを殺したか(79-85) …

久々の論文

いずれ「はじめに」に追記する予定だが、まずは報告を。 去年投稿した論文が、『比較民俗学会報』169号に載った。「ワカヒコ - タカヒコネ神話と昔話」というタイトルだ。 『古事記』『日本書紀』には、「アメワカヒコ」と「アヂスキタカヒコネ」という神々…

釣手土器の話 2 - 棚畑土偶、但し書き

前回、棚畑土偶(いわゆる「縄文のビーナス」)をとり上げた。この土偶については、少し補足することがある。実はこれ、完全に欠けたところのない状態で見つかったというわけではない。 図1は、棚畑土偶が出土したときの写真である。たしかにほぼ完形ではあ…

釣手土器の話 1 - 文様を読んでみる

「吊手土器の象徴性」(「はじめに」を参照)は簡単に言えば、縄文土器の文様の意味を解読しようという試みだ。解読と言っても、暗号や古代文字を読むわけではないから、実はそれほど難しくない。たとえばの話、月見松遺跡(長野県伊那市)から出た「顔面把…