釣手土器の話 7 - 真ん中のこれはヘビだろう
前回に続き、釣手土器背面の話である。
釣手土器の背面でまず目立つのは、真ん中を上下に走る「ベルト」だろう。なにやら複雑な模様が刻まれているが、これはどうやらヘビを表しているらしい。たとえば曽利釣手土器のこの部分を、同じく曽利遺跡出土の「蛇身装飾付土器」(図1左)の胴体と比較してみよう(図2)。
図1 ともに曽利出土*1
図2 比較図
真ん中の文様が上下逆(「M」と「W」)なのはご愛嬌だが、これはほぼ同じデザインだ。
また、御殿場釣手土器もよく見ると、「ベルト」のてっぺんに、スプーン状の突起がある(図3左。赤線で囲んだ部分)。御殿場遺跡の報告書によれば、これはヘビの頭と考えられている*2。横から見るとこのヘビは、斜め上に向かって口を開けていることがわかる(図3右)。
図3 御殿場出土*3
ついでに大深山釣手土器にも、同じところにヘビの頭らしい模様がついている(図4左)。この土器の「ベルト」は鎖状だが、これは同時代の蛇身装飾にもある文様だ(図4右。長野県茅野市、茅野和田遺跡出土)。
図4 左:大深山出土/右:茅野和田出土*4
もちろんこれらがヘビだったとしても、だからなんだという話ではある。釣手土器背面が顔かどうかとは、一見関係がなさそうだ。でもこれが、のちにそこそこ重要な意味をもってくる。