神話とか、古代史とか。

日本をはじめあちこちの神話や古代史、古代文化について、考えたこと、わかったこと、考えたけどわからないことなど。

釣手土器

釣手土器の話 32 - 火山噴火と釣手土器

多分釣手土器は、「火を出産して死に、死後の世界の支配者になる」 というタイプの女神を表している。第3回以来、これはもう何度も書いてきた。のちのイザナミに連なる神なので、仮に「プロト=イザナミ」と呼んでおこう。 ところで釣手土器は、縄文時代中期…

釣手土器の話 31 - ここで双面の件

第14回で、「裏が双面の釣手土器」(図1)にちょっとだけ触れた。今回は、もう少し突っ込んで考えてみたい。と言っても、のっけから残念なお知らせでアレだが、特に目覚ましい仮説はいまのところない。第25回や27回と同じく、「こうかもしれないし、違うかも…

釣手土器の話 30 - 型式編年、その補足

前回、「型式編年」の話をした。ところで伊集院卿ほか『日本ピラミッド超文明』(学習研究社 1986年)では、この型式編年が、けちょんけちょんにけなされている。 日本の考古学は、土器の編年に終始しているといってもよい。土器の編年というとたいへん聞こ…

釣手土器の話 29 - 「型式編年」の話もしておこう

いまさらだが、「釣手土器の話」のそもそもの趣旨は、昔書いた論文「吊手土器の象徴性(上)(下)」(「はじめに」からダウンロードできる)を解説してみよう、というところにある。なるべくわかりやすくと言うか、ゆる目の内容にしたいので、説明がややこ…

釣手土器の話 28 - ふくらんで、はじける

第15回で、「釣手土器の主なデザインは、顔面把手付土器の『ふくらんだところ』を窓にすることで生まれたものらしい」 的なことを書いた。「ふくらんだところ」とは、顔面把手の顔(表)の部分や、「目ばかりの顔」(裏)の目の部分だ(図1~3)。図1 顔面把…

釣手土器の話 27 - むしろノヅチの話(下)

前回に続き、ツチノコ(ノヅチ)の正体について、思いつく限り仮説を立てようという話である。まずとり上げるのは、「②ヤマカガシの突然変異」説だ。この説を語るには、17年前の事件から始める必要がある。 2000年5月21日、岡山県吉井町(現・赤磐市)で、太…

釣手土器の話 26 - むしろノヅチの話(上)

図1 札沢出土*1 図2 ノヅチ - 上:『信濃奇勝録』/下:『野山草木通志』*2 釣手土器――特に札沢遺跡のそれに乗ってる太短いヘビたち(図1)は、「ノヅチ」(ツチノコ)のプロトタイプじゃないのかなぁと、第21回で書いた。ちなみにノヅチとは、図2のようなヘ…

釣手土器の話 25 - 顔面把手とイノシシの鼻

釣手土器の世界では、ヘビは「死」、イノシシは「生」の象徴だったんじゃないかと、前回で書いた。釣手土器の表(窓が1つしかない方)は「生」の世界だから、主にイノシシが現れる。一方裏は「死」の世界だから、ヘビが強調されておるのだろう、という解釈だ…

釣手土器の話 24 - イノシシなのか、ヘビなのか

釣手土器の上にはだいたいにおいて、変なヘビたちが乗っている。中でも特に変なのは、北原遺跡(山梨県甲州市)の釣手土器(図1)だ。第19回以来何度かとり上げてきたが、あらためてフィーチャー*1してみよう。 図1 北原出土*2 図1でおわかりの通り、どうい…

釣手土器の話 23 - 一風変わった釣手土器

札沢遺跡出土の釣手土器(図1)には、ノヅチ(ツチノコ)関係でこのところお世話になっている。今回はヘビだけでなく、土器全体のデザインに注目してみよう。 図1 札沢出土*1 釣手土器の裏側(窓が複数ある方)は、たいてい「目ばかりの顔」になってると、こ…

釣手土器の話 22 - 野雷と書いてノヅチと読む

釣手土器の話と題してるが、今回は釣手土器あまり関係ない。八雷神の1柱である「野雷」をノヅチと読んで、いいのか悪いのかという話だ。 まず、岩波文庫の『日本書紀(1)』を見ると、普通に「のつち」とルビが振ってある(54ページ)。厳密にはノヅチじゃな…

釣手土器の話 21 - ツチノコ、またはノヅチの件

図1 札沢出土*1 第19回で、札沢遺跡出土の釣手土器(図1)に乗ってるヘビについて、「ツチノコのよう」だと形容した。今回はこれ、ほんとにツチノコと何か関係あるんじゃないの、という話だ。こう書くと、「このブログ、いよいよ(本腰入れて)トンデモに走…

釣手土器の話 20 - ヘビと死の世界

死んだイザナミがヘビたち(八雷神)をまとわりつかせていたのと同じように、釣手土器裏側の「目ばかりの顔」もヘビまみれだった(前回参照)。 図1 左:御殿場出土/右:曽利出土*1※曽利例の首から上は、推定復元。 ここまでで、釣手土器(特に、顔面把手付…

釣手土器の話 19 - ヘビの頭が消えてゆく

というわけで今回は、「釣手土器裏面にちょいちょい現れる、逆立った髪の毛みたいなもの」(図1)が、ヘビかどうかという話である。 図1 左:曽利出土/右:御殿場出土*1 むろん曽利例や御殿場例だけなら、肝心のヘビの頭がないので(図2参照)、正直いかん…

釣手土器の話 18 - 日本の雷神はだいたいヘビ

で、イザナミの死体に生じた「八雷神」が、ヘビかどうかという話である。これについては日本の古い文献に、雷神が実際ヘビとして描かれた話がいくつかある。まずは『日本書紀』から、小子部蜾蠃(「ちいさこべのすがる」と読む)という人が、三輪山の神を捕…

釣手土器の話 17 - 死んだイザナミと八雷神

特にここからはイザナミ神話が重要になるので、その内容をまとめておく。なお、最初にお断りしておくと、今回は字ばっかりだ。 イザナミは、イザナギという神と結婚し、日本列島その他を産み出した。でも最後に火の神(カグツチ)を産んだので、焼け死んでし…

釣手土器の話 16 - ところであなたは死んでますか?

釣手土器の裏側(窓が複数ある方)は、多くの場合顔になっている。それはいいとして、なぜこんな変わった顔なのか? 図1 左:大深山出土/右:御所前出土*1 釣手土器背面のデザインとして、一番多いのはいわゆる「目ばかりの顔」だ(似たようなものは、顔面…

釣手土器の話 15 - ふくらんだところが窓になる

釣手土器のデザインはだいたいにおいて、顔面把手(付土器)をリスペクト(?)していることが多い。第4回以来、しつこく書いてきたことだが、改めておさらいしておこう。 まず曽利遺跡の釣手土器(図1右)は、御所前顔面把手付土器(同左)の「胎児」の顔の…

釣手土器の話 14 - 双面、または3面の土器

図1 穴場出土*1 穴場遺跡の釣手土器はその背面(窓が複数ある方。図1)に、「目ばかりの顔」を2つ並べている。ここまでは、前回書いた通りである。これに似たような例としては、藤内遺跡(長野県富士見町)や東吹上遺跡(群馬県高崎市)出土の釣手土器がある…

釣手土器の話 13 - 穴場遺跡の釣手土器

この2回ほど脱線したが、ここで釣手土器背面の話に戻ろう。 第6~10回で、釣手土器の背面が(多くの場合)顔なんだろうな、と思わせる状況証拠をいくつか挙げてきた。自分的にダメ押しと言うか、とっておきの証拠として推したいのは、穴場遺跡(長野県諏訪市…

釣手土器の話 12 - 渦巻きな目の人

前回とり上げた3つの顔面把手の中でも、二宮森腰遺跡のもの(図1)は一風変わっている。 図1 二宮森腰出土*1 表が丹下左膳状態*2なのもアレだが、裏側の顔(?)は両目が渦巻きで、「目を回した人」の古典的表現のようだ。 これとほぼ同じデザインは、花上寺…

釣手土器の話 11 - これらも多分顔だろう

第8回で、顔面把手の裏側が「目ばかりの顔」になってる例として、南養寺や御所前のものを挙げた。一応写真も貼っておこう(図1)。 図1 左:南養寺出土/右:御所前出土*1 でももちろん、裏に顔らしきものをもつ顔面把手は、この2つだけではないのである。釣…

釣手土器の話 10 - ひょっとこ顔の釣手土器

前回、曽利遺跡出土土器の人体装飾(図1左)が、「口を開けたヘビ」を頭に乗せていることに注目した。 これとほぼ同じデザインは、井荻三丁目遺跡*1(東京都杉並区)出土の釣手土器(図1右)にもある。 図1 左:曽利出土/右: 井荻三丁目出土*2 ひょっとこ…

釣手土器の話 9 - 頭上に口を開けたヘビ

図1 御所前出土*1 御所前遺跡出土土器(図1)の人体装飾には、目だけがやけに強調された奇怪な顔面がついていた(前回参照)。これと似たようなデザインは、縄文土器には結構ある。その中で、特に御所前土器に近いのは、曽利遺跡から出た「人体装飾付土器」…

釣手土器の話 8 - 顔面把手、裏の顔

引き続き、「釣手土器背面の2つの窓が、目を表してるかどうか」という話だ。これを考える上では、顔面把手と呼ばれる遺物が参考になる。釣手土器のデザインには、顔面把手付土器が大きな影響を与えているからだ(第5回参照)。 で、顔面把手の裏側を観察して…

釣手土器の話 7 - 真ん中のこれはヘビだろう

前回に続き、釣手土器背面の話である。 釣手土器の背面でまず目立つのは、真ん中を上下に走る「ベルト」だろう。なにやら複雑な模様が刻まれているが、これはどうやらヘビを表しているらしい。たとえば曽利釣手土器のこの部分を、同じく曽利遺跡出土の「蛇身…

釣手土器の話 6 - この裏面は顔なのか?

釣手土器正面の話はこれくらいにして、ここから裏側(図1。窓が2つある方)の話である。これは本当に、「死んだ女神の頭部」なのか? まぁ死んでるかどうかはおいとくとしても、さしあたり顔なのかどうかが問題だ。 図1 左:曽利出土/右:御殿場出土*1 ちな…

釣手土器の話 5 - シンプルな方の釣手土器

釣手土器はお祭用なので、縄文土器の中でもかなり凝ったつくりになっている。でももちろん、顔面把手までついているものは、全体の中のごく一部だ。その他の釣手土器はもう少し地味で、たとえば図1(長野県富士見町、井戸尻遺跡出土)のようなものが多い。 …

釣手土器の話 4 - 火を産む神

ここでようやく本題の、文様解読の話になる。 まず注目してみたいのは、曽利遺跡から出た釣手土器(その正面側)の造形だ(図1)。これは果たして本当に、「火を産み出す女神」の姿なのか? 図1 曽利出土(くどいようだが、首から上は推定復元)*1 この点を…

釣手土器の話 3 - 縄文土器とイザナミ神話

縄文時代の中期だから、いまからだいたい5000~4000年くらい前のことだ。関東・中部地方、特に長野県で、「釣手土器」というちょっと変わった土器がつくられた。 ランプとして使われていたようだが、実用品ではなく、お祭の道具とみられている。全体豪勢な土…