スサノヲとナマハゲ 5 - 「泣ぐ子いねがー」な、人々
前々回からしつこく書いてるが、植物仮装来訪神たちの共通点は次の3つである。
1. 「祖霊」、または「死霊」とみなされている。
2. 子供に対して教育的(むしろ、脅迫的?)な機能をもつ。
3. 秘密結社、または男子結社を構成する。
今回はその2つ目、子供の教育者(または脅迫者)としての性格について語りたい。前回と同じく、文献からずらずら引用していこう。
図1 ナマハゲ*1
ナマハゲ(図1。秋田県):
――さて,ナマハゲは、「泣く子はいないか」とか、「怠け者はいないか」とか、「親の面倒を見ない嫁はいないか」とか、いろんな訓戒というか、戒めの言葉を吐きながら各家々を回ります。
(武内信彦「怠け者はいねが~『男鹿のナマハゲ』」 ※『石油技術協会誌』77巻4号 2012年7月 所収)
図2 トシドン*2
トシドン(図2。鹿児島県下甑島):
――トシドンは天上界にいて、子供達のことを見守りながら、大晦日になると「首切れ馬」に乗って、従者を従えて子供のいる家々を訪れ,その年の子供の素行や行儀に対し、悪戯をしないよういましめたり、さとしたりします。
最後に、来る年を良い子であるよう約束を交わし大きな餅を与えます。この餅は年餅や年霊(トシダマ)と呼ばれ、トシドンにもらうことで無事に年を一つとることができると言われています。
(『第1次薩摩川内市総合計画』2010年)
図3 マンガオ*3
マンガオ(図3。中国)
――悪さをする子や病弱の子はマンガオに頭をさわってもらい、それぞれ性格も良く、体も健康になるようにする。
(萩原秀三郎『稲と鳥と太陽の道』大修館書店 1996年 226ページ)
図4 シャーブ*4
シャーブ(図4。オーストリア)
――悪魔の群れ(川谷注:シャーブやクランプス*5)は、恐ろしい表情と叫び声におびえて逃げまどう子供たちをつかまえては説教をして、袋から贈りものをだして配っていきます。
(遠藤紀勝ほか『クリスマス小事典』社会思想社 1989年 50ページ)
だいたいこんなところである。このうちマンガオは、特に説教はしないようなので、ちょっと毛色が違う。でも、悪さする子の性格を矯正するあたり、やはり教育的機能の持ち主だ。
ちなみにシャーブらは、「袋に入れてあの世へ連れ帰るそぶりを見せたりして」子供を脅すらしい。秋田のナマハゲも子供らに、やっぱり袋に入れて連れ帰り、喰ってしまうぞと迫るという*6。
東西の来訪神たちは見てくれだけでなく、脅しの手口までよく似ている。サンタクロースも袋を持ってるが、ただのプレゼントの入れ物と甘く見ない方がよさそうだ。
*1:http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/33/0000599133/32/img7a79f2cazik1zj.jpeg
*2:https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/storage.withnews.jp/2014/07/23/4/61/46118555-l.jpeg
*3:http://img.chinatimes.com/newsphoto/2016-02-26/656/20160226004308.jpg